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東京地方裁判所 昭和41年(特わ)741号 判決

本籍

中華民国台湾省嘉義市新西区巽山里

住居

神奈川県横浜市南区六ツ川町九六四番地

会社役員

林炳文

一九二五年五月三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中野泰出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役四月および罰金五〇〇万円に処する。

右罰金を完納しないときは、金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

但し、本裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都新宿区西大久保一丁目四四三番地において、キヤバレー「女王蜂」およびクラブ「スカーレツト」を経営していたものであるが、自己の所得税を免れるため売上の一部を除外して簿外預金を蓄積する等不正な方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三八年分の実際課税所得金額は別紙一修生貸借対照表(昭和三八年一二月三一日現在の分)並びに税額計算書(昭和三八年分)記載のとおり一、九六六万五、九〇〇円であり、これに対する所得税額は九四六万四、二四〇円であるにもかかわらず、昭和三九年三月一三日、東京都新宿区柏木三丁目三一二番地所在の所轄淀橋税務署において同署長に対し、課税所得金額は四〇一万〇、六〇〇円でこれに対する所得税額が一二五万二、七七〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出し、右年分の正規の所得税額と申告税額との差額八二一万一、四七〇円は法定の納付期限を経過するも納付せず、もつて不正な行為によつて右同額の所得税を逋脱した。

第二、昭和三九年分の実際課税所得金額は別紙二修正貸借対照表(昭和三九年一二月三一日現在の分)並びに税額計算書(昭和三九年分)記載のとおり二、五三七万三、四〇〇円であり、これに対する所得税額は一、二八七万二、〇四〇円であるにもかかわらず、昭和四〇年三月一三日、前記淀橋税務署において同署長に対し、課税所得金額は六八七万二、五〇〇円でこれに対する所得税額が二五八万四、二五〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出し、右年分の正規の所得税額と申告税額との差額一、〇二八万七、七九〇円は法定の納付期限を経過するも納付せず、もつて不正な行為によつて右同額の所得税を逋脱したものである。

(証拠の標目)

(一)  全般について、

一、大蔵事務官中村貢作成の脱税額計算書並びに所得税額計算書各二通

一、王腸祖の大蔵事務官に対する質問てん末書六通、検察官に対する供述調書一通および同人作成の上申書一通

一、三宅義雄の大蔵事務官に対する質問てん末書三通

一、矢野範治の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(昭和四〇年一二月一七日付=以下四〇・一二・一七の如く略記)および同人作成の上申書

一、張剣秋の大蔵事務官に対する質問てん末書三通

一、小島澄子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通

一、林実通の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四〇・一二・一六)

一、佐々木新四郎、入江照夫、樋口義雄の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、劉基寿、倉田栄三、吉田明各作成の上申書

一、押収にかかる総勘定元帳四冊(昭和四二年押第一三一号の一)、申告所得税控一綴(同号の二)、損益計算書綴計二綴(同号の三、四)、所得調査カード及び資料箋一綴(同号の一八)、昭和三八年分計算書二枚(同号の一九)、昭和三九年度損益計算書等一綴(同号の二〇)、昭和三七年実額調査書類等一綴(同号の二一)、所得税確定申告書三通(同号の二二)、昭和三八年分所得税の更正決議書一通(同号の二三)、当座入金帳一冊(同号の二四)並びに遊興飲食税申告書控一綴(同号の二五)

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書七通、検察官に対する供述調書二通

一、被告人作成の上申書五通

一、被告人田村豊彦共同作成の上申書二通

一、被告人の当公判廷における供述

(二)  別紙各修正貸借対照表中、現金預金並びに非課税利子の各勘定科目および別紙二修正貸借対照表中、当座預金の勘定科目について、

一、根本啓、宮崎卓、前田豊各作成の証明書

一、大蔵事務官中村貢作成の銀行調査書類三通(記録第一二五、一二六、一二七)

一、林実通の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四〇・一一・三〇)

(三)  別紙各修正貸借対照表中、各定期積金の勘定科目について、

一、酒井洋司作成の証明書四通(うち三通は四〇・一二・二四、うち一通は四一・二・一)

一、打越芳男作成の残高証明書二通

一、大蔵事務官中村貢作成の銀行調査書類一通(記録第一二九)

(四)  同じく各貸付金の勘定科目について、

一、何万春の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四〇・一二・一一)、検察官に対する供述調書一通並びに同人作成の上申書

一、呂芳草の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、李徳新の大蔵事務官に対する質問てん末書並びに同人作成の上申書

一、押収にかかる手帳三冊(前同押番号の一〇)、保証金等メモ一綴(同号の一二)、元帳五冊(同号の一三)、振替伝票四綴(同号の一四)並びに入金伝票一綴(同号の一五)

(五)  同じく各出資金の勘定科目について、

一、張炳崑の大蔵事務官に対する質問てん末書

(六)  同じく各保証金の勘定科目について、

一、何万春の大蔵事務官に対する質問てん末書二通並びに検察官に対する供述調書一通

(七)  同じく各什器備品の勘定科目について、

一、矢野範治の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四一・一・八)

一、加藤浩士の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、増尾博、池田清各作成の上申書

(八)  同じく各無尽掛金および無尽借入金の勘定科目について、

一、呂芳草の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、呉鴻章の大蔵事務官に対する質問てん末書一通並びに同人作成の上申書二通

一、楊震慶の大蔵事務官に対する質問てん末書並びに同人作成の上申書

一、押収にかかる財産目録一枚(前同押番号の五)

(九)  同じく各店主勘定の勘定科目について、

一、伊藤正則作成の証明書

一、大蔵事務官中村貢作成の株式、投資信託関係調査書類

一、林淑美、寺口正次、岩田義平、呉鴻章、関昭彦の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、藤井由己子の大蔵事務官に対する質問てん末書並びに同人作成の上申書

一、沢野雅次郎の大蔵事務官に対する質問てん末書二通並びに同人作成の上申書三通

一、潘英仁作成の上申書

一、押収にかかる財産目録一枚(前同押番号の五)、日記帳一冊、(同号の六)、土地売買契約書二通(同号の七、八)、不動産領収証一綴(同号の九)、手帳三冊(同号の一〇)、社長宅改造費明細一袋(同号の一一)、売買契約書一通(同号の一六)、林ビル関係領収証一綴(同号の一七)

(一〇)  別紙二修正貸借対照表中、借入金の勘定科目について、

一、酒井洋司作成の証明書一通(四〇・一二・二四のうち記録第一一五号)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも昭和四〇年法律第三三号所得税法附則第三五条により、その改正前の所得税法第六九条第一項前段に該当するところ、情状により懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑については同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において処断すべく、よつて右刑期並びに金額の範囲内において被告人を懲役四月および罰金五〇〇万円に処し、なお右罰金不完納の際の換刑処分については、刑法第一八条第一項に則り、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、諸般の情状を考慮のうえ同法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤暁)

修正貸借対照表

林炳文

昭和38年12月31日

〈省略〉

修正貸借対照表

林炳文

昭和39年12月31日

〈省略〉

税額計算書

昭和38年分

〈省略〉

昭和39年分

〈省略〉

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